日中の冷え込みも厳しくなり、温かい和菓子に手を伸ばす機会が増えてきました。冷えた体を内側から温めてくれる和菓子といえば、小豆の濃厚な風味と餅の食感を同時に楽しむことができる「ぜんざい(善哉)」が代表格。 子どもの頃から慣れ親しんでいる人も多いと思いますが、なぜ「ぜんざい」と呼ぶのか由来をご存知でしょうか。
「神在餅」がなまって「ぜんざい」になった説も
ぜんざいの由来をたどっていくと、「一休宗純」という禅師にたどり着きます。その名前を聞いて、ピンとくる人も多いはず。テレビアニメでおなじみのキャラクター、一休さんのモデルとなった室町時代の僧侶です。
じつは一休禅師が臨済宗・大徳寺の住職から振る舞われたのが、餅の入った小豆汁。一休禅師が小豆汁を口にした際、あまりのおいしさに「善哉(よきかな)」と喜んだことが由来とされています。
なお大徳寺派にあたる京都府京田辺市の酬恩庵一休寺では、毎年1月の最終日曜日に「一休善哉の日」という行事を開催。1月1日生まれの一休禅師にちなんでいて、絵馬の祈祷奉納後にぜんざいが提供されます。機会があれば訪ねてみてはいかがでしょうか。
現代に伝えられているぜんざいの由来は、「善哉(よきかな)」だけではありません。
いまでも10月のことを旧暦で「神無月」と呼びますが、理由は10月に全国の神様が出雲に集まるため。
出雲では神無月ではなく「神在月(かみありづき)」と呼ばれます。出雲の神在祭で用意されるのが、小豆を煮込んで餅を加えた「神在餅(じんざいもち)」。「じんざい」が出雲のズーズー弁で「ずんざい」になまり、さらに「ぜんざい」へと変化して京都まで広まったとも言われています。
ちなみにぜんざいは、関東と関西で呼び名が異なっているのでご注意を。関西では粒を残したあんの汁をぜんざい、こしあんの汁を「おしるこ」と分けて呼びます。対する関東はどちらの汁も「おしるこ」で、汁気のないあんこを添えたものが「ぜんざい」。関西で汁気のある「ぜんざい」を見て、「おしるこでは?」と頭がこんがらがってしまうかもしれませんね。
ぜんざいの由来は諸説ありますが、長い歴史に思いを馳せながら、じっくりと味わってみてください。
文:oriori編集部