鎌倉

【扇屋】目の前を江ノ電が走る!人気の「江ノ電もなか」をつくる200年以上も続く老舗和菓子屋

都野 雅子

1.お店の中に江ノ電が‥どうなっているのか気になる店構え

湘南の海沿いから龍口寺へ向かうと江ノ電が路面電車だとわかる光景が目に入ります。

江ノ電

足を進めると意表をつかれるお店が現れました。江ノ電がお店にそのまま組み込まれたような店構え。江ノ電もなかで有名な「扇屋」さんです。

店舗入り口

すっぽりと江ノ電が収まっている様子は、なんとも不思議。気になってのぞいてみると中は和菓子をつくる作業場となっていました。江ノ電の中で和菓子、そんな風変わりな景色が、なぜだか微笑ましく感じられるのは「昔ながらのお菓子やさん」という雰囲気をまとっているからかもしれません。

ガラス戸を開くと、ショーケースの中に飾らない優しい和菓子が出迎えてくれました。

2.赤電、青電。江ノ電の歴史もわかる「江ノ電もなか」

江の電最中
パッケージには懐かしい切符のデザイン。車両からの景色が違うのも凝ってて楽しい

神奈川県指定銘菓にも指定されている「江ノ電もなか」。あんの味は、これまで江ノ電として登場した車両に合わせたもの。全部で6種類あり、江ノ電(つぶあん)、赤電(梅あん)、新車(ゆずあん)、チョコ電(こしあん)、青電(ごまあん)、そして一番新しく登場した車両が抹茶あんです。

江の電最中
左から梅あん、ゴマあん、ゆずあん、つぶあん、こしあん

江の電最中
一番新しい抹茶あん

どれもほのかに後味が梅だったり、ゆずだったりで、主張しすぎてないので食べやすい。この江ノ電もなかは5個×2入り、全部で10個入りで1,500円(税込)です。 お土産にバラバラに配っていいのも嬉しいですね。

初代の江ノ電は「タンコロ」と呼ばれていたそうで、その理由は「1両だけでコロコロ走っていたから」と教えてくれたのは扇屋の杉並さん。
このもなかの販売は、昭和60年(1985年)。江ノ電が藤沢~片瀬(江ノ島)間を開業したのが1902年なので、実に80年以上も経ってからつくられました。

その誕生秘話を伺ったところ、何か新しいお菓子を作ろうかと先代夫婦が話し合った結果、すんなりと江ノ電にちなんだお菓子にしよう!と決まったんだそう。 それもそのはず。店先を毎日江ノ電が走るのを見ていれば、愛着も親しみも湧くというもの。

江の電
ほんのちょっぴり江ノ電の左上に見えるのが富士山

「ここから江ノ電と富士山がちょうど見れるのよ。」と教えてくれたのが、店の前でした。お店が素敵なフォトスポットだったんですね。

3.創業は天保の頃。龍口寺の敷地内にあった和菓子店

江の電

扇屋は詳しい創業は不明ですが、天保の頃にはあったことがわかっているそうで、現在200年余を超える老舗です。お話を伺うと、今もすぐそばにある龍口寺の敷地内にあったのだといいます。龍口寺を訪れる人々の口を喜ばせていたのでしょうね。

片瀬まんじゅう
片瀬まんじゅう 100円(税込)

昔から扇屋でつくっていたのがこちら「片瀬まんじゅう」です。しっとりとした皮に包まれたこしあんは、甘さのバランスがちょうどいい感じ。飽きのこない味なので、いくつも食べられてしまいそう。

季節のお菓子、道明寺もいただきましたが、ホッと心寛ぐ味でした。門前で腰掛けてまんじゅうを頬張る、当時の人々に想いを馳せそうです。

道明寺
道明寺 130円(税込)

4.日蓮上人にあやかって生まれた「消難まんじゅう」

ショーケースの中に目を止めたのが「消難まんじゅう」。

消難まんじゅう
消難まんじゅう 100円(税込)

読み方はそのまま「しょうなん」。思わずくすりとしてしまう語呂合わせですが、名前の由来について伺うことができました。 鎌倉時代に幕府から処刑を言い渡された日蓮は、龍口寺で刑が執行される前に届けられたぼたもちが落ちてしまい、砂まみれになったのも気にせず食したそうです。

いよいよ刑が執行される時になって、振り上げた刀に雷が落ちて刑がとりやめになったといいます。 この話には諸説がいろいろありますが、扇屋ではこの話から難を逃れた縁起として、難を消す「消難まんじゅう」をつくり始めたのだそうです。

消難まんじゅう

中はつぶあんで、まんじゅうの皮には砂を模したごまが入っています。

扇屋のスタッフ

扇屋は、江ノ電江ノ島駅から徒歩3分の場所にあり、家族の皆さんでつくっているため「江ノ電もなか」もここでしか買えません。また、数に限りがあるため、早い時にはあっという間に売り切れてしまうこともあるそう。ぜひ江ノ島に出かけた時には忘れずに!

取材・文:都野雅子