池袋・目白

【鼓月 目白店】虎の心を鼓の音に変えて。鼓月がつくる新しい限定和菓子レアチーズ×わらび餅。昭和を生き抜いた京都の和菓子處の物語

都野 雅子

1.目白店限定の気になるお味「レアチーズわらびもち」

和菓子にバターにチョコレート。今でこそ珍しくない和洋折衷な和菓子も多い時代ですが、それがまだ試したことのない味だったら、そしてそれが老舗ひしめく千年の都で、だったら?

京銘菓として知られるバターやクリームを使った「華」「千寿せんべい」「姫千寿せんべい」は、戦後まもなくまだそれが珍しいとされた時に、京都の和菓子處「鼓月」が創り出したお菓子。

当たり前ではないものが当たり前になるまで。今回はそんなお話と2020年3月に開店した「鼓月 目白店」限定販売の「レアチーズわらびもち」をご紹介します。

レアチーズわらびもち
目白店限定!レアチーズわらびもち 500円(税別)※提供写真です。

籠に入った乳白色の艶やかな光沢。「レアチーズわらびもち」はその名の通り、レアチーズにわらび餅を合わせた、今までにない和洋折衷な和菓子です。聞いて見れば「なるほど!」となったとしても、そうそうには浮かばない組み合わせですね。

目白わらびもち

下にはぷるんと柔らかな弾力のわらび餅。いつもなら黒蜜やきな粉といただくものですが、その上にはチーズの味がしっかりとするレアチーズ。これが不思議にマッチしていて美味しい!初めて頂くその味ですが、あっさりしているので、このサイズなら一人でもペロリと食べられそう。

レアチーズわらびもち

京都でつくられ、運ばれてくる数は1日50個前後。テレビにも紹介され、開店から1か月ほどで約1,500個も売れている人気商品となっています。早々に完売することもあるそうなので、食べたい方は早めの時間に行くのをオススメします。

レアチーズわらびもち

カットしてケーキみたいにすれば、まるで「和風レアチーズケーキ」!1人でご褒美スイーツに、家族でお茶うけに、ぴったりですね。

2.千寿せんべいはドイツ製の焼肉機から始まった!?

千寿せんべい

関西を中心に全国各地に出店している「鼓月」の代表的なお菓子の1つが「千寿せんべい」。特徴的なのはなんといっても波打つようなその形。材料には独自の千寿せんべい粉を使い、季節ごとに配合や焼き加減を変えるので、実は簡単には作れない職人の技が必要です。

と、その材料をよくみると、小麦粉、そして卵、砂糖…。せんべいというよりクッキーに近いのでは?と、素朴な疑問を目白店店長の松田さんにぶつけると、「これはヴァッフェルなんです。」との答え。

ヴァッフェルとは、ドイツ語でワッフルのこと。その誕生は1968年、鼓月が新たな菓子を生み出そうとドイツからお菓子を焼き上げる機械を仕入れたところ、到着したのはなんと焼肉を焼く機械。しかも数台もあったのだとか。

千寿せんべい

高価でしかも何台も、普通ならかなりのダメージになるはずが、創業者の中西美世さんは「もったいないから使っちゃおう!」とあえてその波のような形を利用して、ヴァッフェルを生み出したのだといいます。

いわれてみれば、あのナミナミ(鼓月さんいわく)は肉の脂を落とすもの。面白いですね。そして「そのヴァッフェルが、なぜせんべいなのか」と広報の佐藤さんに尋ねると「元々、新しいせんべいを開発しようとしていたのと、京都にはたくさんせんべいがあったので斬新なものにしたい」‥との想いから「千寿せんべい」と名付けられたんだそう。

鼓月にはそんな新しいものを取り入れてく気風が根っこにあります。それは1945年、終戦の年に創業した時から始まっています。

3.自由な発想は先代譲り。新発売のレモンスカッシュ

鼓月のれん

暖簾に美しく描かれているのは「鼓」に「月」。一見風流な文様ですが、もしかしたら虎月だったかもしれません。創業時の店の名は中西製菓。京都で和菓子店として続いていくために名前を変えようとして、考えていたのは虎が月に吠えるような勢いのあるもの。

そんな時、相談した妙心寺の老師に「いくら虎が吠えても、お月さんまでは届かん。互いの距離は永遠に縮まらん。それならば優雅な鼓の音が月まで響き届くような、雅で壮大な名前“鼓月”はどうだろう」(鼓月HPより)と、言われたことがきっかけで「鼓月」になったといいます。

鼓月_店舗

鼓月が創業した場所は京都。何百年と続く老舗の和菓子店も多く、戦後始めたばかりの鼓月には新参者としての苦労がありました。しかし後にバターなどを取り入れ、その新鮮さから人々の評判を呼ぶことになりました。

それでも伝統とは違う菓子。度々言葉で傷つけられた記憶から、虎が月に吠える気持ち、があったのでしょう。暖簾に美しく描かれているのは「鼓」に「月」。一見風流な文様ですが、もしかしたら虎月だったかもしれません。

しかし、心を救うのもまた言葉。老師の一言で新たな一歩が始まったのかもしれません。おいしいものはおいしい。その心は現在、「鼓月研究所」に受け継がれています。

姫千寿せんべい_レモンスカッシュ
姫千寿せんべい レモンスカッシュ 12枚入 1,300円(税別)
※販売期間:2020年4月8日~6月30日(販売終了日は予定)

4/8に新商品として発売された「姫千寿せんべい レモンスカッシュ味」。千寿せんべいを一口で食べられるサイズにした姫千寿せんべいは定番に加え、期間限定のフレーバーがあります。

今回初登場のレモンスカッシュは、レモンでなくレモンスカッシュ。「レモンよりレモンスカッシュのシュワっとした涼感があるほうが、初夏に食べたいのではないか?という考えからスカッシュになりました」とのこと。 鼓月研究所では創業時から変わらず、喜んでもらえる菓子の開発を続けています。レアチーズ×わらび餅が誕生したのも納得ですね。

4.意識しなくても日本人。季節と用途に合わせる気持ち。

鼓月_お菓子盛り合わせ

目白店には、限定のものが、レアチーズわらびもちの他にもう1つ。それがこちら。

鼓月_風呂敷セット

オリジナルの風呂敷と籠のセットです。色はリバーシブルの赤、リバーシブルのピンク、無地のピンク、無地の黄緑、無地の紺の5色。風呂敷と籠で400円(税別)で、中身は自分で選んで詰めることができます。訪問時の菓子折に喜ばれていて、好評です。

鼓月_風呂敷セット

好みの色をそれぞれ購入するのかと思いきや、「法事には紺、桜の時期にはピンク、そして新緑の始まる今は黄緑など、季節と用途に色を使い分けている人がほとんど」だとか。誰に言われるわけでもなく心と季節を合わせる。こんな時日本人だなと感じませんか。

風呂敷ですが、なくなり次第終了とのことですので、早めに足を運んでみて下さいね。

檸檬饅頭

取材・文:都野雅子