こんにちは、和菓子コーディネーターのせせなおこです。この連載では、何げない毎日がちょっといい日になるような、そんなおやつを紹介します。
和菓子の魅力はおいしいこと、季節を感じられること、そして、歴史を感じられることだとおもっています。今日紹介する羊羹は、なんとあの豊臣秀吉が食べた羊羹! みんなで一緒にタイムトリップに出かけましょう!
この羊羹を作っているのは和歌山にある総本家駿河屋、なんと創業560年を超える老舗。創業したのは室町時代なんだとか! 元々は京都の伏見でお饅頭屋さんとして始まり、時の天下人・豊臣秀吉の大茶会で引き出物として使われたのだそうです。
羊羹は竹の皮に包まれています。早速開けていきましょう! どきどきしますね……!
オープン! 中から出てきたのは竹の皮の型がついた蒸し羊羹。小豆の紫色がとても美しいです。小豆の芳醇な香りがたまりません!
恐る恐るカットします。ムチっとした蒸し羊羹独特の感触が包丁から伝わってきます。
私はとにかく蒸し羊羹が大好きなので、今までもたくさんの蒸し羊羹を食べてきましたが、今まで食べた蒸し羊羹はどちらかといえばムチっと感が強いものが多かった気がします。この羊羹もずっしり感はあるのですが、スパッと歯切れのいいのが特徴です。
そして何よりびっくりしたのが小豆の香りがとにかくすごい! こしあんなのにこんなに濃厚な小豆を感じられるなんて。あまりのおいしさに手が止まりません……、1本ひとりで食べるのも余裕なのでは? と思えるほどのおいしさでした、
もう一つ紹介するのが五代目善右衛門羊羹。当時羊羹といえば蒸し羊羹が一般的でした。そんな中、寒天を使い、今では一般的になった日本で初めての「煉羊羹」を誕生させたのが総本家駿河屋です。紅羊羹、大納言の2 種類を楽しむことができますが、今回は真っ赤な色が美しい「紅羊羹」を選びました。
これは切りたてなので、煉羊羹の見た目ですが、時間が経つと周りが糖化してきてシャリっとしてくるのだそう。1本の羊羹を時間の経過と共に楽しむことができます。
秀吉と同じものを食べている……! とニヤニヤしながら食べました。そして日本初の煉羊羹! 日本の羊羹の歴史を堪能することができる、歴史好きにはたまらない貴重な2品でした。
文:せせなおこ