今は、一年で最も寒い時季とされる大寒(だいかん)。大寒は二十四節気のひとつで、立春直前の冬の最後の期間です。2025年の大寒は1月20日(月曜日)から2月2日(日曜日)で、その最初の日は「甘酒の日」に設定されています。この日を甘酒の日に決めたのは、1969年から甘酒を販売している森永製菓株式会社。大寒の初日にしたのは甘酒を飲むと体が温まるから。確かに初詣に行った神社でいただいたりすると、すぐに体がポカポカしてきます。
実は、甘酒には2種類があって、作り方の違いで区別されています。一つは柔らかく炊いたお米と麹を発酵させてつくる米麹甘酒。もう一つが日本酒をつくる際に出た酒粕を原料に、水と砂糖を加えて煮込んで作る酒粕甘酒です。どちらの甘酒も家庭で作ることができますが、作り方が違うと含まれる成分も違ってきます。
米麹甘酒は「飲む点滴」とも言われ、栄養価の高いブドウ糖や必須アミノ酸、オリゴ糖やビタミンB群などが豊富に含まれています。アルコールは含まれていません。また、砂糖も使っていないので、カロリーは少なく、自然な甘味です。夏に飲まれるのは、こちらの甘酒です。
酒粕甘酒は酒の搾りかすから作られるため、煮るとはいえ微量のアルコールが含まれている事があります。そのため妊婦さんや子どもは飲まないほうがいいでしょう。また、砂糖を加えて作るため、カロリーも多少高めです。成分としてはアミノ酸やビタミン、酵母に加え、ビフィズス菌の餌となるレジスタントスターチが多く、食物繊維による腸内環境の改善、血糖値の上昇を押さえる効果も期待されています。
市販の製品の中には、両方をブレンドしてつくられたものもあります。
どちらの甘酒も歴史は古く、米麹甘酒は『日本書紀』に登場する「醴酒(こさけ)」や「天甜酒(あまのたむさけ)」がルーツだとされています。米と麹を使って一晩でできることから「一夜酒(ひとよざけ)」とも呼ばれ、主に神事で使われていました。
もう一方の酒粕甘酒は『万葉集』の時代に、「粕湯酒(かすゆざけ)」と呼ばれる、酒をしぼった残りの酒粕をお湯に溶いて飲む酒があったことが文献で知られています。
この時代の甘酒は、いったいどのような味だったのでしょうか? 今となってはそれをしることはできませんが、現在まで伝わっていることを考えると、きっとおいしいものだったに違いありません。江戸時代には甘酒茶屋や行商の甘酒売りによって提供されていた甘酒。現在、既製品としては、前述の製菓会社の他に、お酒や味噌の酒造・醸造会社などでも製造されています。
お正月に神社で配られたり、大寒の日が甘酒の日だったりして、冬のイメージが強いのですが、「甘酒」は俳句では夏の季語なのです。江戸時代の甘酒売りは夏に売り歩いていましたし、ブドウ糖や必須アミノ酸、ビタミンB群など、栄養素が豊富に含まれているため、夏バテの症状である体のだるさや疲れを回復し、腸内環境を整えるのに最適な飲料だったのです。また、甘酒には100mlあたり60mg前後のナトリウムが含まれていて、熱中症予防にも効果が期待できます。
3月のひな祭りの際にも甘酒が飲まれたりしていますが、本来桃の節句で使われていたのは「白酒」です。白酒は、みりんや焼酎などに蒸した米と米麹を混ぜ合わせ、1カ月程度熟成させた後に軽くすりつぶして造った、白く濁った酒のことで、節句の行事として無病息災と厄除けを祈るために飲まれたものです。アルコールも9~10%含まれているので、当然子どもは飲むことができないので、アルコールの含まれていない甘酒で代用するようになったとされています。
前述のように甘酒自体は和菓子ではありませんが、甘酒を使った和菓子は多数存在します。甘酒を使った饅頭や羊羹、甘酒飴に甘酒あんを包んだどら焼きなど調べるとたくさん出てきます。最近では栄養豊富な点に着目して、赤ちゃん向けの離乳食にも活用されていると聞きます。
栄養満点の日本の伝統食、この機会に活用してみてはいかがでしょうか。
文:oriori編集部