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お取り寄せ連載企画 おやつの時間 「第99回 梅月堂のゆのせん」

せせなおこ

こんにちは、和菓子コーディネーターのせせなおこです。この連載では、何げない毎日がちょっといい日になるような、そんなおやつを紹介します。

今回は鹿児島県にある梅月堂の商品「ゆのせん」を紹介します。商品名の「ゆのせん」とは、シンプルな材料を使って焼き上げた「サクパリッ」とした食感が特徴の梅月堂の代表銘菓、「湯之元せんべい」の愛称です。そんな湯之元せんべいをアレンジしたゆのせんは去年10月に発売されたばかりの新商品です。

ゆのせんには山椒、チョコミント、珈琲ヴァニラの3つの味があります。今回は3つの味、全てが楽しめるmixにしました。

ゆのせんのもとになった湯之元せんべいは大正10年(1921年)から鹿児島・湯之元温泉郷で温泉に泊まりに来る方のお土産として親しまれてきました。湯之元にあるおせんべいだから、ということで、いつしか「湯之元せんべい」と呼ばれるようになったのだそうです。

私の祖父が鹿児島出身だったこともあり、昔からこの湯之元せんべいを食べる機会があり、私が鹿児島に住んでいる間も、家族のお土産にはいつもこの湯之元せんべいを買っていました。実際に梅月堂の工場見学をさせていただいた時にも製造風景を拝見させていただき、職人技に感動した、思い出の詰まったお菓子です。

そんな湯之元せんべいの代表の味がなんといっても山椒。今回のゆのせんでも味わうことができます。

一口サイズのゆのせんはパリッとカリッとした食感が特徴。心地よいいい音がします。そんな山椒のテーマは「オトナのスパイシーなノー・バター 山椒 ラングドシャ」。山椒の葉は、地域のお客さまのお宅、30軒ほどで摘ませていただいたものを使用しているんだそうです。香り高い山椒の香りに、「うん、これこれ!」と懐かしくなります。

お次はおせんべいでこの味ができるの!? と衝撃を受けたチョコミント。チョコミントのテーマは「オトナのさわやかで甘美なノー・バター チョコミント ラングドシャ」。口に入れる前から爽やかなミントの香りが漂い、いざ口に入れると想像以上の爽快感にびっくりします。

味に奥行きを与えるために、バニラビーンズ、そして隠し味のマイヤーズ・ダークラムが使われているのだそう。さらに、生地にはフランス、ヴァローナ社の上質なブラックチョコレートが。爽やかな中にチョコレートの深みが加わり優雅な一枚になっています。

続いて赤のパッケージがおしゃれな珈琲ヴァニラ。こちらのテーマは「オトナのビターでメロウなノー・バター 珈琲ヴァニラ ラングドシャ」。珈琲ヴァニラの特徴はズバリ“ほろ苦”。最近は生地にコーヒーを使ったお菓子も増えてきましたが、ここまでほろ苦い珈琲を感じられるものはなかなかありません。生地の表面にはバニラビーンズ、そして隠し味にはなんとスコッチウィスキーが使われているんだそう! ほろ苦いコクとスモーキーさを感じられる大人な味わいです。

手に取りやすいかわいいパッケージでありながら、爽快感やほろ苦さなど、大人になってようやく楽しむことのできる、まさに大人のためのおやつだなと感じました。ほろ苦さの隣にそっと甘いバニラアイスを添えて食べるのもおすすめです。色々と物思いにふけってしまう夜のお供に、お酒やコーヒーと一緒にいただけば、きっと明日はいい日になりそう。そんなことを思わせてくれるゆのせんです。

文:せせなおこ