鎌倉

【段葛 こ寿々】地元で人気のこ寿々さんのわらび餅。おそばと一緒に若宮大路の古民家で過ごす心地よい時間。

都野 雅子

1.鎌倉でこ寿々のわらび餅。地元で知られたおいしいおやつ

古都・鎌倉のメインストリートといえば若宮大路。由比ガ浜から鶴岡八幡宮まで続く道で、今は鎌倉駅あたりから八幡宮までの段葛が特に知られています。

桜が両側に植えられたその道に沿って様々なお店が並ぶ中、風流な古民家と風に流れる柳が目に留まります。

「段葛 こ寿々」。地元ではもちろん、観光で訪れた人にも人気のわらび餅があります。

ぱくりと一口では食べきれない大ぶりのわらび餅が5個。鏡のように反射する濁りのない黒蜜にたっぷりのきな粉。店内でいただくわらび餅は美しい金沢の器に盛られ、目でも楽しませてくれます。

わらび餅 600円(税込)

その手間から、つくるのが大変と言われている本わらび粉に、蓮粉などをブレンドしたこ寿々のわらび餅の特徴は強い弾力。そして「つるん」とした滑らかな口当たりです。
また、黒蜜は沖縄・波照間島産の黒糖を使用していて、風味豊かでありながら澄んだ美しい照りが品の良い味。

店主の小堺さんに伺ったところ、こ寿々のわらび餅は元々、そばを食べた後のお菓子として誕生したのが始まりだそう。それが評判を呼び「お土産に」と求める人が多く、持ち帰り用につくり始めたのがきっかけでした。

左からプチ1個小6切れ入り 390円(税込)、わらび餅小9切れ 864円(税込)、わらび餅大14切れ 1,188円(税込)

そばに見立てたわらび餅にはのど越しと艶、つゆに見立てた黒蜜には濁りのない鏡面のような澄んだ照り。そのまま、ずばり「そば屋のわらび餅」です。これはお土産の箱の中にも書かれていて、食べれば「なるほど」と納得します。

お土産で食べる時は、氷水にくぐらせると、ひんやりとよりおいしく召し上がれますよ。

2.蓼科のそば畑から直送のそばの味

段葛 こ寿々の入り口にある提灯には、手打ちそばの文字。こ寿々がこの場所に店を構えたのは1995年。元々は北鎌倉駅の近くにあった京都の漬物屋「近為」の店舗内でスタートしました。

店主の小堺さんは、元は海外を股にかける商社マンで、長年の忙しい生活を振り返り、また異国の地にあって、恋しくなったのは日本食。
中でもおいしいおそばが食べたいという想いが募り、一念発起してそば職人になることを決意したとのこと。

川崎にあったそばの名店に、弟子を取らないと言われながらも頼み込んで修業しました。
その後、東京の老舗そば店でさらに腕を磨き、独立を考えていた時に「近為」の現会長さんと知り合い、北鎌倉店で開業することに。

もりそば 870円(税込)

「こ寿々」の文字も「近為」の会長さんが書いたものだと言います。
そば粉は蓼科のそば農家さんから直接仕入れたもので、こ寿々専用でつくっています。

まず味わって欲しいそばは、そのまま食べれば香りがよく、つゆは芳醇で、そのまま飲んでも全く辛くならないまろやかさ。
合わせてたぐれば、なんとも言えないのど越しと後味。印象は品のいいおそばです

そばを楽しみに、昼時にもなれば行列ができて、店の辺りも賑わっています。

築90年の古民家でいただく時間を忘れそうなひととき

段葛 こ寿々の店内はテーブル席で、赤と黒の招き猫が迎えてくれます。2階には個室もあり予約も可能とのこと。

二間続きの部屋には大きな花瓶が供えられ、畳などは新しく整えられてあります。
築90年になる古民家を改装し、随所に店主のこだわりの家具や建具が並び、一瞬ここだけ時間がタイムスリップしてしまうような感覚を味わえます。

古都・鎌倉で訪れたいお店の一つとして、リストに加えておきたいですね。

取材・文:都野雅子