お茶菓子の定番・饅頭は、和菓子の中でもスーパーやコンビニで気軽に購入できる商品。とはいえ、個人で楽しむだけでなく来客用や贈呈用ともなると、多少は値が張ってもランクアップしたものを選びたいですよね。そこで今回は、「皇室献上」の実績がある格式高い饅頭3選をご紹介しましょう。
1.和三盆糖と大納言小豆が織りなす豊かな風味
まずは大正14年創業という長い歴史を持つ「扇屋」の「献上饅頭」から。栃木県那須郡那須町で「扇屋 湯本店」と「鳳鳴館 扇屋」を運営する那須御用邸御用命舗の扇屋では、和菓子や洋菓子の他にも御用菓子を販売。バターの風味が広がる洋風桃山菓子や、飽きのこない上品な味わいの練切り菓子などが販売されています。
献上饅頭は、那須の自然をこよなく愛した昭和天皇が御用邸に滞在した際に献上された製品がベース。現在は記念菓子として製造され、シンプルな見た目ながら、焼き印の入った気品のある雰囲気の饅頭です。
扇屋はこだわりをもって素材を厳選していて、献上饅頭は和三盆糖をふんだんに使用してしっとりとした仕上がりに。さらしあんの中にちりばめられた大納言小豆がアクセントになり、豊かな味わいが口の中いっぱいに広がります。商品は1箱8個入り。オンラインショップにて購入もできるので、ぜひチェックしてみてください。
2.生地から中身まで素材にこだわった「上用まんじゅう」
京都府長岡京市に店舗を構える和菓子店「みずは北川」では、上皇上皇后両陛下来店の折に献上された「天上天鼓」が人気。上用生地で包みこまれた丸ごと1粒の大きな栗が存在感を放っていて、こしあんとともに広がるとろけるような甘みとふっくらした食感がたまりません。
天上天鼓は本来「薯蕷(じょうよ)饅頭」と呼ばれており、祝い事で提供されることから「上用まんじゅう」とも呼ばれています。普段あまり聞き馴染みのない名称ですが、「薯蕷」とは山芋のこと。天上天鼓には国産の山芋と蕎麦粉を使用し、上用粉、砂糖、さらにすりおろした山芋を使って仕上げられます。シンプルだからこそ和菓子職人の技量がわかる、“基本”かつ“最も難しいお菓子”なのだとか。
生地にくるまれた栗にも、みずは北川のこだわりが光ります。自然の栗の甘さとおいしさを味わってほしいという思いから、添加物甘味料は使用せず、砂糖のみでやわらかく仕上げられているのが特徴です。甘くなりすぎないよう仕上げた栗の甘露煮は、まさに天上天鼓の肝とも呼べるでしょう。
甘露煮の周りを包みこむこしあんには、北海道産の小豆を使用。京都・西山の名水をふんだんに使って、じっくり炊き上げられました。みずみずしくあっさりした味わいのこしあんは、甘露煮との相性もばっちり。職人が1つひとつ丁寧に生地に包みこんで蒸し上げる饅頭は、お茶の席にワンランクアップしたおもてなし感を演出してくれるはずです。
3.七戸に伝わる天皇陛下命名の和菓子
文久元年(1861)に「陸奥七戸柏栄堂」の屋号で創業した「お菓子のみやきん」では、大正天皇命名の献上銘菓「駒饅頭」を販売中。原材料に長芋や地元の清酒を使用した、シンプルでありながら奥が深い味に仕上げられた看板商品です。
駒饅頭の元となった饅頭の歴史はとても古く、城下町だった時代から語り継がれるほど愛されてきたそう。まさに七戸の歴史とともに歩んできた和菓子ですが、明治41年9月に転機が訪れます。当時皇太子だった大正天皇が、七戸町にある種馬牧場を訪問。その際に献上された饅頭が天皇陛下によって「駒饅頭」と命名され、現代まで伝えられることに。なお駒饅頭のパッケージにも、天皇陛下が「駒饅頭」と名づける場面がイラストであしらわれています。
七戸は絵馬の町としても知られ、白駒饅頭の表面につけられた馬の焼き印がアクセント。以前は白い酒蒸し饅頭のみだった駒饅頭は、時代の変化とともに黒糖を使用した黒駒饅頭も生まれ、現在のスタンダードへと発展を遂げました。
白駒饅頭は、清酒と長芋を使った皮でこしあんをくるんでいるのが特徴。一方の黒駒饅頭は、黒糖入りの皮で白ねりあんを包みこんでいます。どちらも上品な甘さに仕上げつつ、奥深い味わいが堪能できる逸品。以前と変わらない技法によって生み出される七戸の献上銘菓は、お茶請けにもぴったりです。
職人の手によって生み出される皇室献上の格式高い饅頭は、甘みや風味などそれぞれの持ち味があります。いずれも公式オンラインショップで購入できるので、店舗まで足を伸ばすのは難しいという方も、皇族に親しまれた饅頭の味わいをぜひ堪能してみてくださいね。
文:園田マチコ