その昔、海に遊び癒される避暑地だった磯子。風光明媚なこの土地には料亭も数あり、芸者さんが招かれるお座敷も多かったそう。
創業は昭和13年。永きにわたり磯子の地で愛されている「磯子風月堂」。時が流れ、料亭や別荘がマンションに姿を変えても、”今”も変わらずここにあります。
現在の店主は3代目。女性和菓子職人と水板職人の夫、そして社長の父と専務の母・・家族で営む素敵な和菓子店です。
今回は全て手作りの黒糖饅頭と、餅の美味しさが自慢のごまだれ餅をご紹介致します。
1.手包みで1つ1つ表情が違う。風味豊かな黒糖饅頭
黒糖饅頭 1個180円(税込)
ところどころ形が違う見た目も愛らしいお饅頭。温かさが伝わる一口サイズの黒糖饅頭は 国産の最上級小麦粉「宝笠」と国産の黒蜜を使用。
黒糖のコクのある甘さがしっかりとあるのに、パクパクといくつでも食べられてしまうくらい、軽い後味が特徴です。
この黒糖饅頭は、2018年にNHKで放送された連続テレビ小説「半分、青い。」にも使われています。何でも、風月堂の黒糖饅頭がイメージに近いとオファーがあったそう。
風月堂の饅頭は1つ1つ手包み。そのため包餡機で包んだような均一なものではなく、手作りの妙が感じられます。
「今ではあんこも買ってくるところも多いんじゃないかな。味も良くなって美味しいしね。」と答えてくれたのは風月堂の水板職人でもあり、店主・石原マサミさんのご主人である石原勝利さん。
水板職人は、今では数少ない小豆を煮て餡を作ったり、餅を作ったりする専門の職人。風月堂では全て自家製にこだわっています。
手包みのため、平均して1日に作れる黒糖饅頭は70個。繁忙期でも1日150個です。焼印も鋳物製のバーナー式で手作業。昔ながらの工程が変わらず続けられています。
薯蕷饅頭(じょうよまんじゅう)※別注品
山芋と米粉を合わせた薯蕷饅頭も山芋の風味をしっかり感じられ、しっとりもっちりとした感触。黒糖饅頭とはまた違う美味しさでした。
2.餅の美味しさがたまらない!「ごまだれ餅」
地元・磯子で逸品認定を受けている「ごまだれ餅」は、とろりとした黒胡麻のたれが美味しいと評判のお菓子。
濃厚な黒胡麻の味と、甘さ控えめなたれが噛むたびに餅に絡んでいいバランスです。
たれももちろん美味しいのですが、なんといっても味わって欲しいのはこのお餅。
ごまだれ餅 10個入り820円(税込)、20個入り1,640円(税込)
弾力があり、それでいて柔らか。もち米の甘さをよく感じられます。この「ごまだれ餅」は、2代目が東北に旅行した折に、たまたま食べたことがきっかけとなり、作ってみたのが始まり。
「餅マニアなので餅にこだわり、磯子風月堂のごまだれ餅はこしが強いです。」と話してくれたのは、3代目の石原マサミさん。
磯子風月堂でさらにオススメしたいのは、見ているだけで楽しくなる練りきり。
なかでも、ここ最近注目を浴びたのは、世間で注目されている「アマビエ」の練りきりでした。
3.「アマビエ様」で紡ぐ縁。祈りも感謝も込めて
「アマビエ」は、世間でも知られている”疫病退散”の妖怪。今年の1~2月頃に、Twitterで「アマビエチャレンジ」が話題になっていたのを見て、参加したいと思い考えていた時に発見したのが古い「青海波文様」の焼印。
「青海波文様」には”平穏な日々が続く”という意味があり、その焼印で作った練りきりをTwitterに投稿したところ、大きな反響に。瞬く間に広がり、その目に見える応援の気持ちを感じ、商品化することになったといいます。
そしてその輪は大きくなり現在、「 #全国和菓子アマビエ大会開催中 」のハッシュタグをつけて、Instagram上で開催しています。
また、同じく神様のお使いで、その姿を拝めば”難を逃れる”といわれている「ヨゲンノトリ」も見本として制作されていますが、注文があれば作りますとのこと。
家で過ごすことも多い中、”無病息災”を願い和菓子をいただくのも、素敵だと思いませんか?
取材・文:都野雅子
注:販売価格に関しては、2020年7月現在で、今後変更の可能性があります。
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