飯田橋・神楽坂

【神楽坂 梅花亭】油で揚げる天ぷらモナカ!?発売当時予約1か月待ちの「浮き雲」など、気になる和菓子がたくさん。

都野 雅子

いろんな和菓子が数あれど、他ではお目にかかれない珍しい和菓子が神楽坂にあります。その名も「鮎の天ぷら最中」。東京・神楽坂にある【御菓子司 梅花亭】の銘菓です。

最中をどうして天ぷらにしようと思ったのか。そこには初代の想いが込められた物語がありました。

今回は多くのメディアに取り上げられた、初代考案「鮎の天ぷら最中」と梅花亭をご紹介します。

1.気さくに入れる有名店「梅花亭」

梅花亭

江戸の名残があちこちに残る人気の街・神楽坂。梅花亭は神楽坂通り沿いにある1935年創業の和菓子店です。

蔵を模した店には白地に赤く梅の花が描かれていて、また通りからは店内がよく見える明るい雰囲気。ふらりと、立ち寄りやすい気さくさがあります。

梅花亭

中に入ってまず感じたのがその種類の豊富さ。迷う楽しみを十分味わえるのも魅力。 奥では和菓子を製造している光景もみえます。梅花亭ではなんと23種類の餡を使い分けているとのこと。

材料は、国産小麦、北海道十勝産ブランド小豆「雅」とこだわっていて、和菓子に使う材料は全て店内で手作り。そのため、果物の旬が訪れると総出で加工作業を行っています。秋になればリンゴの季節。毎年、紅玉を煮るのが恒例となっています。

梅花亭 いちじく餅 380円(税別) ※いちじく餡入りです。

和菓子によって季節を知るのは素敵ですね。訪れた日にはいちじく餅が出迎えてくれました。


2.最中を天ぷらに。思い出から誕生した「鮎の天ぷら最中」

梅花亭 鮎の天ぷら最中 上:白餡  下:こし餡 共に250円(税別)

紙包みから現れたのは、鮎の形をしたスラリとした最中。通常の最中よりも若干色が濃いめかな?と思うくらいの印象です。味は2種類でこし餡と白餡。

梅花亭

さっそく味わってみると、ここで納得。「香ばしい!」の一言です。また楽しいのが食感。どうしても餡の水分でしっとりしてきてしまう最中ですが、サクッとしていて心地よい歯触りです。

最中の皮を揚げた後、1日置いて油をしっかり切るため、油っこさはなく、餡は最中の皮の味によく合い、甘さはしっかりあるのに塩味が感じられ全体的にあっさりとした味。口の中で最中の皮が張り付くこともなく食べやすいのも特徴です。

梅花亭

この最中の味は、初代・井上松蔵さんの母が作ってくれたかき餅が原点。戦前から和菓子を作っていた松蔵さんが、シベリアに抑留された時に思い出し、もし無事に日本に帰国できたらこんな風味の和菓子を作りたい!と、帰国後に考案したそうです。

鮎の形にしたのは松蔵さんの故郷である新潟の魚野川の鮎をモチーフにしたため。思い出から生まれた菓子は神楽坂土産として喜ばれています。

そして、今はこの「鮎の天ぷら最中」と並んで評判なのが「神楽坂福来猫もなか」。

梅花亭 神楽坂福来猫もなか 左から白あん、こしあん、粒あん、黒糖あん 共に250円(税別)

夏目漱石のゆかりの地でもある神楽坂にちなんで作られています。可愛らしい表情はたまりませんね。


3.発売当時は予約1か月待ち。梅花亭4代目考案の「浮き雲」

梅花亭 浮き雲 上:抹茶餡 下:小倉餡 共に250円(税別)

梅花亭には他にも人気のオリジナル和菓子がありますが、中でも面白いのがこちらの「浮き雲」。見た目も柔らかそうな和菓子です。この「浮き雲」を生み出したのが、現在4代目である井上豪さん。

和菓子職人の中でも最も難しいとされる”優秀和菓子職”に認定され、「現役で高度な技術を持って仕事をし、なおかつ次世代にその技術を伝承している」ということで、”東京マイスター”にも認定されています。

その豪さんがこの「浮き雲」を最初に思いついたのは製菓専門学校の頃。「当時いろいろなお菓子を試作しては、店頭でお客さんの反応をみていたとのこと。そして、柔らかくふわっとしている食べ物にしたい。」という発想から思い付いたのが、メレンゲを使った皮。

食感は柔らかくふわふわ。洋菓子のようで中身はしっかり餡子です。皮自体が甘いので中の餡は甘さ控えめで、素材感もありとてもいいバランスです。

梅花亭

発売当時、芸能人の取材でおいしい!というコメントを頂き、和菓子研究科の先生が新聞のコラムで紹介してくれたりと、大人気に。製造が追いつかなくなり予約1か月待ちという状況になったそう。


4.新作「宝づくし」は、ほうじ茶の香り

梅花亭 宝づくし 280円(税抜)

こちらが梅花亭の新作「宝づくし」。うっすらと茶色の饅頭の生地はほうじ茶の色です。 茶葉も含まれていて香ばしく、中の黄身餡とキャラメリゼした和くるみのほろ苦い甘さが絶妙にマッチ。

名前の通り、パッケージには宝珠・隠れ蓑・打ち出の小槌・宝鍵・砂金袋、宝袋・宝巻・丁字があり、お祝い事や年始の挨拶にぴったりです。

梅花亭

一味違う和菓子に出合える梅花亭を、ぜひ訪れてみて下さいね。

取材・文:都野雅子