秋から冬にかけて旬となる食べ物はいろいろありますが、根茎を食用とするレンコンもそのひとつです。9月から12月が旬の時期とされていて、主に冬場に収穫することから「蓮根(はすね)掘る」は冬の季語となっています。
冬の始まりに当たる11月17日はレンコンの日です。1994年(平成6年)のこの日、茨城県土浦市に全国のレンコン産地が集まって「蓮根サミット」が開かれたことに由来します。レンコンの国内生産量1位はもちろん茨城県。水の豊富な霞ヶ浦周辺で生産が盛んで、全国シェアの半分以上を占めています。次いで、佐賀、徳島、愛知、山口と続きます。
レンコンの原産地はインドとも中国ともいわれています。漢字で書くと「蓮根」つまり「蓮」の「根」の部分と思われがちですが、私たちが食べている部分は実は「地下茎」、栄養が溜まって肥大した茎ということになります。レンコンを輪切りにすると、断面には大小10個前後の穴が空いています。この穴は水底の泥の中で、酸素を供給する役割を果たしています。同じように、丸い葉を支えている葉柄の部分にも穴が通っていて、空気を通すストローのようになっています。
蓮は大賀ハスの例でわかるように古くは弥生・飛鳥時代から日本に存在していました。古くは、主に花を観賞するために育てられていました。レンコンが食用として栽培されるようになるのは鎌倉時代以降、僧侶らによって中国から導入された品種からで、それは現在在来種と呼ばれているものになります。在来種のレンコンは生産量が少なく希少な品種といわれていて、西日本を中心に作られています。根茎は幾分細めで、粘りが強いのが特徴です。それに対して明治期以降に新たに入ってきたのが現在中国種と呼ばれているもので、ふっくら太めで、収量も多い品種です。市場に出回っているほとんどは、この中国種です。茨城県で作られているのもこの種類です。
レンコンの断面の穴は「先を見通す」ことに通じるため、縁起が良いとされていて、正月のおせち料理や節句の料理にもよく用いられる理由になっています。長時間の加熱でホクホクした食感となり、すりおろしてから加熱するとモッチリ、酢に漬けるとレンコンの粘りの成分と酢が反応して、独特のシャキシャキ感が楽しめます。このようにレンコンといえば、切って筑前煮や天ぷら、郷土料理としての辛子レンコン等、根菜料理としての食材というふうに思っている方がほとんどではないでしょうか?
なぜ、orioriでここまでレンコンの話をしているのだろうと……。タイトルにも書きましたが、実はレンコンを原材料にする和菓子が存在するのです。
ビタミンCが豊富に含まれているレンコンの主成分は炭水化物、でんぷんになります。また、切ったときに糸を引くことから分かるように、食物繊維も多く、胃腸の粘膜を保護して、消化を助ける働きがあるといわれています。
レンコンのでんぷんには、粘り気が高く、糊化しやすいという特徴もあるようです。
そのレンコンから抽出したでんぷん(蓮粉)を使って作られているのが、わらび餅によく似た和菓子の「蓮粉餅(はすこもち)」です。これはすりおろしたレンコンを使って作る料理の「レンコン餅」とは異なりますから、間違えないでください。醤油で絡めたりはしませんよ。
レンコンのでんぷんに水と和三盆糖を加えて、加熱しながら練り上げていくと粘り気が出てきて、わらび餅のような透明感のある、つるりとした餅状になります。わらび餅と同じく、きな粉と黒蜜を掛けてお召し上がりください。わらび餅とはまた違った食感と香りが楽しめますよ。
文:oriori編集部