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新年の歌会始のお題を和菓子で表現する「御題菓」という雅な試み。

oriori編集部

来たる1月22日に、皇居では宮中歌会始の儀が行われます。これは国民が参加できる行事としての歌御会(うたごかい)であり、天皇陛下が主催する歌会として、広く一般からの詠進によって成り立っています。日本のみならず海外からも歌は寄せられており、日本の伝統文化の中心をなすと言われている和歌が、世界へも広がっていることがうかがえます。

明治12(1879)年に、一般の詠進歌のうち特に優れたものを選歌とし、歌御会始で披講(ひこう)されることとなって以降、第二次大戦後からはお題は一層平易なものとされ、より開かれた国民参加の歌会始となりました。テレビで中継されることにより、さらに多くの人が歌会始に興味を持つきっかけにもなりました。

2025年のお題は「夢」ということで、歌に詠む場合は「夢」の文字が詠み込まれていればよく、「夢幻」、「夢中」、「夢想」のような熟語にしても、また、「夢見る」、「夢路」のように訓読しても差し支えないとされています。今年度の詠進は昨年の秋には締め切られていて、昨年末の12月25日には、1万6250首の中から選ばれた10名の入選者が発表されています。最年長入選となったのは、長野県の元エンジニアの方、77歳です。最年少の入選者は宮崎県の高校1年。短歌を作り始めて1年での入選はお見事です。

歌会始の儀では、天皇皇后両陛下の御前で、一般から詠進して選に預かった歌、選者の歌、召人(めしうど)の歌、皇族殿下のお歌、皇后陛下の御歌(みうた)と発表が続き、最後に天皇陛下の御製(ぎょせい。天皇がお詠みになった和歌)が披講されます。どなたでも詠進することができるので、我こそはと思われた方は、これから発表される来年のお題を確認してチャレンジしてみるのも一興かと思います。

ところで、この歌会始にちなんで、12月頃から年始にかけて、多くの和菓子店で販売される「御題菓(おだいか)」というお菓子があるのをご存じでしょうか? 御題菓とは、歌会始と同じお題で作られる創作和菓子のことなのです。昨年1月のお題の発表から1年、お題をどう解釈して和菓子として成立させるのか、各菓匠の創意と腕の見せ所なのです。お店によっては、社内公募で職人からデザインやアイデアを募集し、形にしていくところもあると聞いています。

御題菓の作成が始まったのは、明治21(1888)年のこと。京都の和菓子店の有志が集まってお題にちなむ菓子を作って展示会を開いたのが最初といわれています。なんて素晴らしいことを思いついたのでしょう。

2025年の今年も、とらやをはじめ、甘春堂や鼓月、両口屋是清など有名どころの和菓子店が、今年のお題「夢」にちなんだ御題菓を期間限定で提供しています。昨今では、京都に限らず全国の和菓子職人が御題菓子を発表。ネットで検索すると、さまざまな御題菓の画像を見ることができ、そのままオンラインで購入することも可能です。

また、それぞれのお店では御題菓と並んで今年の干支、「巳」を意匠とする干支菓子も提供されていたりして、この時期、店頭は華やかなおいしさに満ちていることと思います。新春菓子の定番、花びら餅や常盤饅頭(ときわまんじゅう)もいいかもしれませんが、今年だけのオリジナル、新年の薫りに満ちた御題菓を味わってみてはいかがでしょうか。

文:oriori編集部