
この3月31日から、新しいNHKの朝の連続テレビ小説が始まりました。タイトルは『あんぱん』。昭和・平成を代表する漫画家であるやなせたかしさんとその妻・小松暢(のぶ)さんをモデルとしたオリジナルドラマです。
やなせさんは、言わずと知れた『アンパンマン』の生みの親。アンパンマンは、お腹がすいていたり、困っている人がいると、飛んできて助けてくれる、正義のヒーローなのです。そのヒーローの誕生に大きな影響を与えたのが暢さんだと言われています。
アニメ『それいけ!アンパンマン』が初めてテレビで放映されたのは1988年10月3日。だからこの日は「アンパンマンの誕生日」!
それとは別に「あんぱんの日」というのが2001年に制定されていて、それが4月4日なのです。
明治8(1875)年の4月4日に、花見のために向島の水戸藩下屋敷へ行幸した明治天皇に山岡鉄舟が木村屋の酒種桜あんぱんを献上したのが由来となっています。
酒種あんパンは1874年(明治7年)に、木村屋(現・木村屋總本店)創業者であり茨城県出身の元士族・木村安兵衛とその次男の英三郎によって考案されました。
日本に本格的な西洋風のパンが伝来したのは1543年のこと。種子島に漂着したポルトガル人によって、鉄砲とともにもたらされました。1854年に鎖国が解かれると、横浜や神戸などの港町を中心に、パン作りが広がりました。
1869年、現存するパン屋でもっとも古い「木村屋總本店」が銀座で創業。欧米でパン生地づくりに酵母として使うイースト菌が当時の日本で希少だったこともあり、木村屋では酒饅頭の製法にならって、日本酒を造るときに使用する酵母、酒種を使ってパン生地を発酵させていました。酒種は簡便性に於いてはイースト菌には劣りますが、風味の点においては優れています。ただし自家製造のため、特別な環境・管理が必要であり、しかも酒種の管理は難しく、勘や経験が重要になります。
そして、あんぱんに桜の花の塩漬けが初めて用いられたのは明治天皇に献上された時のこと。花見に合わせて吉野山の八重ザクラの花が使われたそうです。これを契機に宮内省の御用達となった木村屋の知名度はぐんぐんと向上し、日清戦争で日本各地から離合集散した兵士たちに、あんぱんが支給されたこともあって、明治30(1897)年前後には全国的にあんぱんが流行しました。木村屋では1日10万個以上売れ、買い求めるお客さんが大行列をつくり、30分以上待たせることもあったといわれています。
あんぱんには、桜の塩漬け以外に、ケシの実やゴマが振りかけてあることがあります。あれはあんぱんの中身を見分けるために掛けているそうです。木村屋のあんぱんでいうと、何も掛かっていないのが小倉の粒あんで、ケシの実はこしあん、白ゴマは白インゲンのあんこです。掛けると香ばしくなるという利点もあるということです。
パンの中にあんこを入れるという日本独自のアイデアは、それ以降、1900年には「ジャムパン(銀座・木村家)」、1904年には「クリームパン(新宿・中村屋)」などを生み出すこととなり、あんぱんは日本における菓子パンの元祖となりました。
そして、4月4日は、もう一つの国民的人気マンガに関係する食べ物の日でもあります。
その主人公は『ドラえもん』。そう、この日はドラえもんの大好物、「どら焼きの日」。
3月3日の「桃の節句」と5月5日の「端午の節句」に挟まれた4月4日を、あんこを間に挟む「どら焼き」に見立てて制定されました。また、どら焼きを食べてみんなが幸せになって欲しいという願いを込めて、4と4を合わせた幸せ(4合わせ)の日である4月4日を選んだということです。
「あんぱん」と「どら焼き」。「アンパンマン」と「ドラえもん」。いずれも日本が生んだ偉大な人気者。4月4日は、その邂逅に関係する貴重な記念日なのです。
文:oriori編集部