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「和菓子」って、何? その成り立ちと歴史を調べてみた。

oriori編集部

「和菓子」と言われて思い浮かべるのはどんなお菓子でしょうか?
羊羹、おまんじゅう、たいやきに大福餅……。なんとなく「あんこ」のイメージです。あとはお茶に合うものというイメージですね。甘くない、お煎餅やおかきもお茶に合う和菓子だし、季節感いっぱいの色鮮やかな練りきりなんかもお茶席の甘味を想像させますよね。

ここで言う「和菓子」とは、日本の伝統的なお菓子のことで、明治以降にヨーロッパなどから新しく伝わった「洋菓子」に対して名付けられた名称です。洋服と和服、洋食と和食、つまり「洋」に対しての「和」という考え方です。言葉としては比較的新しいものですが、菓子自体の成り立ちは古く、日本古来の伝統や文化に深く根付いたもので、地域に根ざして発展してきたものなのでしょう。
では、和菓子のルーツはいったいどこにあるのでしょうか、ちょっと調べてみました。

「和」がつけられる前の「菓子」はもともと「果実・木の実」などを指す言葉で、「果子」とも書かれていました。また、果物のことを「水菓子」と呼んでいたことはよく知られています。古代にはそれらが間食として食べられていて、甘味を持っていたことから、やがて現在のお菓子、嗜好品の類いを指すものへと変化してきたと考えられています。

奈良・平安時代に中国から伝わってきたのが、米粉や小麦粉を練って成形したものを油で揚げ、甘葛(あまづら)の煮詰めたものを掛けた唐菓子(からくだもの)の類いです。「甘葛」とは、古代の日本でツタの樹液から作られていた幻の甘味料と呼ばれるもので、かの『枕草子』にも「あてなる(上品な)もの」として登場しています。甘葛の製法は永い間失われていて、近年になってこの幻の味を再現しようとする実証実験がいくつか行われていて、実際に食した人によると「さらりと甘く、後味すっきり雑味なし」ということらしいです。なかなかに面白いレポートなので、興味のある方は調べてみてください。

この頃に、唐菓子の作り方を参考にして生み出されたのが日本で最初の餅菓子とも言われる「椿餅(つばきもち)」です。現代の椿餅は、白い道明寺の餅の中にこしあんが入っているようですが、室町時代の文献によると、この当時の椿餅は、もち米の糒(ほしいい)と甘葛をこねて固め、椿の葉で挟んだものと伝えられています。当然、あんこは入っていません。

鎌倉時代に入り、菓子は禅宗の点心の影響をうけながら発展していきます。点心は禅宗の寺院で朝と夜の食事の間に取る軽食のことですが、まんじゅうや羊羹の原型となるものは点心の食事からでてきたものです。ただ、この時代のまんじゅうも羊羹も、菓子というあつかいではなく、甘味のあるものでもなかったと言われています。

やがて、室町末期になると、ポルトガルやオランダの南蛮菓子、カステラやボーロ、金平糖、有平糖などが入ってきます。その原材料や加工方法を取り入れて本格的に甘味のある菓子が出てきたのもこの頃です。基本的に植物由来の原料から作られる和菓子にあって、鶏卵の使用は例外とされています。これらのお菓子は、原料や製法などの点で和菓子の歴史に大きな変革をもたらしました。中でも南蛮交易による砂糖の普及は茶の湯文化の発展と相まって、茶菓子の発展をもたらしました。

現在普及している和菓子の原型が出来上がってくるのは、おおよそ江戸時代のことです。この時代に和菓子が発展してきたのにはいくつか要因があります。
一つは、道明寺粉や白玉粉、寒天といった新素材の発見です。これにより、落雁(米粉)、練羊羹(寒天)、桜餅(道明寺)、葛菓子(葛)などの菓子が出始めました。
次に砂糖の流通拡大です。輸入品である砂糖は高価で大変貴重な品でした。八代将軍の徳川吉宗は精糖を奨励し、和三盆は純国産の砂糖として大変重宝されました。

最後に、元禄文化の開花による京菓子の発展です。古典文学や四季折々の風情が菓子の意匠や銘の中に取り入れられるようになります。目でも楽しめる、みやびな琳派芸術の影響です。 また、人々の往来による地域の交流や競争も和菓子の発展に寄与しました。繊細な京菓子に対してより庶民的な菓子を愛する、江戸特有の菓子文化が興ってきたのです。ちなみに今のように甘いあんこが庶民の口に入るようになったのも、この頃です。

明治以降になると、前述した洋菓子が入ってきます。ただし、洋菓子は高級品で一部の上流階級の人にしか口にできなかったこと、バターやミルクなどの動物性の素材にはまだなじみがなかったことから、世の中に急激に広まるということはありませんでした。

このようにして、洋菓子と区別するために「和菓子」という言葉が登場し、いにしえの時代から発展し続けてきた和菓子は素晴らしい伝統食文化として定着することになったのです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

文:oriori編集部