国道16号線を八王子に向かって相模原警察署を左に曲がると、大きな桜の木が連なる通りに出ます。
「相模原市役所さくら通り」。桜の名所として春になると多くの人が訪れるこの通りから1本入ったところに「菓子工房 くろさわ」(以下、くろさわ)はあります。
- 1.どんどん増えるリピーター。オリジナル和菓子の渋皮まろん
- 2.相模原といえば酒まんじゅう。地元では欠かせないお菓子
- 3.相模原の無形民俗文化財をモチーフにした的祭最中(まとまちもなか)
- 4.「お団子ないの?」リクエストに応えたみたらし団子
1.どんどん増えるリピーター。オリジナル和菓子の渋皮まろん
「渋皮まろん」は渋皮付きの栗が一粒、生クリームと合わせた黄身あんに包まれた半生菓子。ここ最近、出店しているところで一番人気のお菓子です。
この「渋皮まろん」は和菓子の一つである「桃山」をアレンジしたもの。和菓子の中でも卵を使った黄身あんはなんとなく洋菓子にも近い味わいですが、そこに生クリームが加わり、さらに濃厚でまろやかな風味に。
くろさわでは上生菓子や最中といった昔ながらの和菓子もありますが、多くは時代に合わせ、お客さまが好む和菓子をつくっています。
2.相模原といえば酒まんじゅう。地元では欠かせないお菓子
相模原の和菓子として一番知られているのが「酒まんじゅう」。全国に先駆けてというわけではなさそうですが、この地域の和菓子店では定番のお菓子なのだそう。
酒まんじゅうは通常、夏の時期につくられますが、くろさわでは年末年始と柏餅をつくるゴールデンウイークを除いてほぼ通年つくっています。
自家製の酒種を仕込んだ酒まんじゅうは包みを開くとふんわりと甘い香りが。しっとりとそしてふっくらとしたまんじゅうのあんは2種類あり、味噌あんとつぶしあんがあります。
いただいたのはつぶしあん。皮はしっとりとして甘酒のような味わいで、ふっくら。中のあんこもほどよい甘さです。
3.相模原の無形民俗文化財をモチーフにした的祭最中(まとまちもなか)
そのままでは読み方に迷う「的祭最中」。この少し変わった名前の由来は市内にある田名八幡宮に伝わる神事で、大きな的に幼い男の子が矢を射り、豊凶を占うもの。その神事に合わせたお菓子を知り合いからの縁がきっかけとなってくろさわの初代がつくったのが的祭最中です。相模原銘菓としても親しまれています。
サクサクの最中に、甘みの強いあんこがたっぷりと入り、食べ応えは十分。縁起物としてお土産にもおススメです。
4.「お団子ないの?」リクエストに応えたみたらし団子
「和菓子をあまり食べていない人にも喜んでもらえるお菓子が一番」そう話すのは、店主の黒澤章典さん。現在は三代目となる伸吾さんと一緒に店を切り盛りしています。
章典さんは和菓子の良さを広めたいと「さがみはらスイーツフェスティバル2013」でグランプリも受賞。
材料へのこだわりはもちろんですが、それ以上に大事にしているのは、今のお客さまが求めているお菓子をつくることだといいます。
そのため、常に定番と言われる和菓子だけではなく、新しい和菓子を考案しています。くろさわにはそんな和洋折衷のお菓子も多く、渋皮まろんもその1つです。
そして、これまでくろさわではつくってこなかったというのが団子。
新しいお菓子を、という想いと近所でつくっているところも多かったため、あえてつくらなかったという理由から店頭に並ぶことがなかったそう。
しかし、時代の流れで和菓子店が減り、今度は「お団子はないの?」と訪れるお客さまから尋ねられることが増えてきたため、そのニーズに応えるため、つくり始めました。
そのため、みたらし団子の名前には「店主のきまぐれ菓子」の文字が。
求める声に耳を傾け、柔軟に対応していく。そんなしなやかさがくろさわの魅力です。
ぜひ、足を運んでみてくださいね。
取材・文:都野雅子