昭和25年6月に設立された全国和菓子協会。終戦後まもなくから70年以上、和菓子と向き合っている団体です。
その活動は幅広く、6月16日を「和菓子の日」と制定したり、和菓子の健康性や文化性を訴えるための講演会、セミナー、シンポジウム、手づくり和菓子教室など、のべ100回以上開催したりと、積極的に和菓子の啓発を行なっています。
今回は、全国和菓子協会の専務理事である「藪 光生」さんに、全国和菓子協会の活動内容について詳しくインタビューさせていただきました。
1.全国和菓子協会ってどんなことをしてるの?
—— 全国和菓子協会はどんな目的で設立されたのでしょうか?
全国和菓子協会は昭和25年に設立されたのですが、当時は戦争直後。戦争中は和菓子の主な材料が配給制度でしたから、和菓子が十分に作れない時代が続いていました‥
昭和25年、砂糖などが統制解除されて、和菓子が十分に作れるようになってきたとき、「和菓子業界人がみんなで協力しながら切磋琢磨して業界発展のために頑張っていこうじゃないか」という目的で作られました。
—— 現在はどんなことをされているんですか?
大きな役割として3つあると思っています。
1つ目は、法律が変わるとか、衛生管理で守らなければならないこととか、それらの情報を店舗や職人さんに正しく伝達して履行を促すこと。また、時には、こういう法律が検討されているときに、現場で実行の可能性が低い場合などは内容を緩和して頂くことを、公的な機関に陳情すること。
2つ目は、和菓子店の営業に役立つように、店頭掲示のための「季節のポスター」や「和菓子啓発の栞類(しおり)」を配布したり、お客様に差し上げる紙袋や箱の製作販売など、会員の営業に資すること。
3つ目は、和菓子というものを多くの方々に知っていただくために、和菓子の啓発を目的にした啓蒙、和菓子のイベントやセミナーの開催を通じて、お客様に対して常に和菓子の素晴らしさを発信していくこと。
この3つの仕事が今の全国和菓子協会の柱になっています。
2.和菓子の魅力を知ってもらうイベントを開催
※2019年6月開催「手づくり和菓子教室」の様子
—— イベントをやってらっしゃるということで、どのようなイベントを開催しているのですか?
和菓子はいろんな切り口で魅力があります。例えば、和菓子の歴史を知ってもらうイベント。
和菓子の歴史は、日本の生活文化の歴史と繋がっていて、例えば「団子」っていうのは昔、縄文時代にどんぐりやナラの実を食べようとしたときにアクが強くて食べられず、誰にも教わらないが、すりつぶして水に浸したらアクが抜けて食べられるようになった。これをこねて丸めて、茹でたりして食べたのが「団子」の始まりなのです。
時を同じくして「餅」ができる。ご飯を炊いたらご飯はすぐ傷んでしまうが、ついて「餅」にしたら常温でも傷まない。焼いたらまた食べられる。これを生活の知恵の中で我々の先祖が作り上げてきたのです。その「餅」が今でも和菓子屋の主力商品になっている。
こういう文化や歴史を知っていくと、和菓子の奥深さが現れてきます。これをイベントで知ってもらいたい。
※2019年6月開催「手づくり和菓子教室」の様子
他にも、和菓子の材料にはどんなものが使われているのかを知ってもらうイベント。和菓子の菓銘(かめい)についてを知ってもらうイベント、和菓子職人に和菓子を作ってもらい、好きな和菓子を食べてもらうイベント、手作り和菓子にチャレンジするイベント‥など様々な形で、和菓子の啓発をしています。
—— これからどんなイベントをやろうと考えていますか?
実は去年初めて、その場で作った和菓子を大きな画面で見て頂くという試みを行いました。3人の職人さんに「梅」という同じテーマで和菓子を作ってもらい、その手元の映像をその場で大画面に映し出したのです。
これは参加者の反応が非常に良かったので、今後の啓発活動の中で生かしていきたいと思っています。
3.厳しい審査を通り、選び抜かれた「選・和菓子職」
※「選・和菓子職」とは
高度な製造技術が求められる和菓子製造技術を和菓子業界が統一して公平に評価し、権威をもって認定する制度が「選・和菓子職」です。
—— 「選・和菓子職」はなぜ作られたのですか?
イタリアンでもフレンチでも、シェフ・パティシエ・ショコラティエと称する人が、「誰々のお店」ということでアピールするのだけど、和菓子の世界では「誰々の作った羊羹」「誰々の作ったきんつば」というふうに「誰々」が出てこない。
それはある意味、日本人的なのです。日本人というのは、属しているお店が繁盛すれば、そこで働いている職人もそれで満足するところがあって、ことさらに自分が作ったものだと職人が主張することはないのです。
ただ、これからは技術的に優れた職人の名前が、知られるのも良い事だと思います。そういう職人たちが「誰々が立派な和菓子を作ってくれるから」というように評価されることで、後進に励みを与える事にもつながるし、職人たちの意識も高まるはずだと。そこで「選・和菓子職」という制度を作らなければいけない、という思いに繋がりました。
—— 職人さんからはどのような声をいただいていますか?
「選・和菓子職」の審査基準が厳しいというのは皆さん分かっていて、終わった後に反省会もしています。実は、何回落ちても受ける人がいて、7年連続で受けて7回目で認定されたという人もいます。
その人が認定されたときに、うっすら涙を浮かべて「藪さん、来年もう一回来てもいいですか?」と言うんです。「どうして?」って聞いたら「私は、初めて受けた時から毎年毎年、自分の技術が良くなってきていると実感しています。来年また来させてもらったら、もっと良くなると思っています。」というお話をいただいたことがあります。
そういう想いを持った人たちが受けてくる。だから、そういう職人たちの想いに応えてあげるということが、私たちにとってとても大切なことなのです。
4.終わりに
藪さんの言葉には、和菓子業界を長く支えてきたからこその重みがあり、「和菓子に対する想い」や「和菓子職人に対する敬意」がひしひしと伝わってきました。
そして、全国和菓子協会が大切にしているのは、「進取の気象に富む」ということ。
伝統を守り続けるだけでなく、新しいことにも次々とチャレンジしていく全国和菓子協会。今後も、まだやったことのない啓発事業やイベント、プロジェクトに取り組んでいくそうです。
全国和菓子協会の今後に、ぜひ注目してください!
取材・文:oriori編集部
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