1.生まれ変わった昔懐かしいお菓子
優しい甘さとカリッとした食感に懐かしさを感じる、かりんとう。一般的には、黒砂糖がほっこりと甘い“黒かりんとう”と、白砂糖を使った上品な甘さの“白かりんとう”をイメージする人が多いはず。
そんな中、東京・日本橋小伝馬町に本店を構える『日本橋錦豊琳』は、かりんとう専門店として遊び心とアイデアが光る多彩なかりんとうを生み出しています。
『日本橋錦豊琳』は、明治28年創業の老舗菓子問屋である『丸井スズキ』が、長年培ってきたノウハウと目利きを生かし、昔懐かしいお菓子を生まれ変わらせ新しい楽しみ方を提案しようと立ち上げたブランド。
東京駅グランスタ店をはじめ商業施設内に4店舗を展開。そして日本橋小伝馬町にある本店は、路面店ならではのゆっくりと買い物を楽しめる雰囲気が魅力です。
店頭には、「きんぴらごぼう」「野菜」「ゆずこしょう」といったしょっぱい味の商品から、「黒糖」「むらさきいも」など、ほんのりと甘い商品までが並びます。中でも人気は、「きんぴらごぼう」。
レギュラー商品詰め合わせ9個入 3592円 ※商品は単品での購入不可。2個入りから販売
どの商品も日本の伝統的な素材や味わいを生かしているものの、「こんな味のかりんとう見たことない!」と意外性のある商品ばかり。レギュラー商品に加え、月ごとに入れ替わる限定商品も目が離せません。
取材時はチーズ味が期間限定として登場していたのですが、その理由はなんと、ボジョレーヌーボーの解禁日に合わせてとのこと。そう、かりんとうとワインという新しいペアリングを提案しているのです。そんなセンスあふれる発想が、ニクイ!
レギュラー商品と期間限定商品をあわせて、毎月12種類のかりんとうが並びます。レギュラー商品も定期的に内容を見直し入れ替えているので、いつ行っても新鮮な感覚で商品を選ぶことができ、飽きることがありません。
2.奥深き、かりんとうの世界
「日本橋錦豊琳」のかりんとうは、種類の豊富さはもちろん、一つ一つの味わいや食感の奥深さに驚きます。それは、商品に合わせて細やかな工夫がなされているから。
手前から時計回りに「野菜」「むらさきいも」「黒糖」「きんぴらごぼう」。
かりんとうの作り方は、例えるなら“小さな揚げパン”。小麦粉を練り上げてから発酵させた生地を、小さく切り分けて油で揚げていきます。
「日本橋錦豊琳」では、厳選した国産小麦を使用してベースとなる生地を作り、そこに「野菜」ならカボチャやホウレンソウ草を練り込み、「きんぴらごぼう」ならゴボウを練り込んで七味唐辛子をまぶしていきます。材料を配合する際、それぞれの分量のバランスをとるのが難しいところ。どの商品も試行錯誤を重ねた上で、素材の味わいが引き立つよう仕上げられています。また、一度にひと袋食べきれる量なのと、濃すぎない絶妙な塩梅の味付けなのもこだわり。
左から順に「黒糖」「きんぴらごぼう」「むらさきいも」、残り4本は「野菜」。
さらに、商品によって生地の太さを変えることで、それぞれの味に合う食感を生み出しています。「きんぴらごぼう」ならごぼうの風味とピリッとした辛さに合わせてカリカリ、「野菜」は素材の旨味を軽やかに楽しめるようサクサク。「黒糖」や「むらさきいも」は、外側をカリッとさせながら、中からほんのりとした甘さを感じます。
風呂敷(小)176円/(中)275円 ※商品代別
新感覚のかりんとうは、手土産として求める人もたくさん。箱詰め以外に、かわいい風呂敷包みのギフトがあるのも嬉しいですね。
3.「かりんとう」で、どこまでいけるか
どの店舗もバラエティー豊かなかりんとうを取り揃えていますが、本店でしか手に入らないカステラやおせんべい、アーモンドスカッチなどの商品も魅力的。
アーモンドスカッチ プレーン 432円
昔懐かしいお菓子を新しく生まれ変わらせるというスタンスは、かりんとうだけでなくすべての商品に共通していていること。アーモンドスカッチは、クランチ食感に仕上げているのが「日本橋錦豊琳」ならでは。
懐かしいお菓子を独自のアイデアで新たなものへと生まれ変わらせてきましたが、店舗担当者の河原光さんは、かりんとうへの挑戦はまだまだ終わらないといいます。
さらに、河原さんからこんなエピソードも。
「以前、焼きそば味のかりんとうを販売したことがあって。他にはない組み合わせでしょう? 私は美味しくて気に入っていたのですが、ちょっとコアだったようで、その後、廃盤になってしまって。でも、そんな遊び心を大切にした商品作りで、これからもお客様に楽しんでいただきたいです」。
今後、どのようなかりんとうが登場するのでしょうか。楽しみで目が離せません。
取材・文:松尾友喜/撮影:土肥さやか