鎌倉

【鎌倉創作和菓子 手毬】一つ一つの個性が美しい 手作りの醍醐味に触れる体験を

松尾 友喜

1.女性職人が美しさと楽しさを提案

和菓子の中でも、四季を表現したデザインや鮮やかな色使いに目を引かれる上生菓子。そんな美しさに魅了されて和菓子の道へと進んだ御園井裕子さんは、『鎌倉創作和菓子 手毬』を構え、女性ならではの感性で美しさや可愛いさを表現した創作和菓子を生み出し、注目を集めています。

今回は、和菓子の美しさや手作りの楽しさを伝えたいという想いから同店が開催している「和菓子づくり体験講座」に潜入。講座の様子をレポートします。

鎌倉創作和菓子 手毬
江ノ電「長谷駅」から徒歩約7分の静かで落ち着いたところに、会場となる『鎌倉創作和菓子 手毬』の長谷坂ノ下教室があります。

体験講座
体験講座は、水・金・土・日の10:00~と14:00~開催。取材時は平日の14:00~の回に参加しましたが、女性グループや家族連れでにぎわっていました。

月ごとに作る和菓子のテーマが異なり、11月は「柿」。

「柿といっても甘柿なら次郎柿や富有柿、渋柿なら平核無柿など、色々な種類がありますよね。皆さんはどんな柿が好きですか?」と、先生が参加者に優しく語りかけながら、講座がスタートしました。

2.個性の素晴らしさを伝える講座

体験講座では約1時間で3個の上生菓子を作り、1個はその場で味見を、残りの2個は自宅へ持ち帰ることができます。

初心者向けに優しくアレンジされた作り方なので、身構えなくても大丈夫。先生の説明を聞きながら、参加者は手を動かしていきます。

柿
柿の材料は、黒、オレンジ、黄色、緑の四色の餡。それぞれを三等分して丸めたら、次にオレンジの餡を手の平で練ります。

よく練ることで餡が美味しくなるそうですが、手の平に餡がベッタリとついてしまうので注意。ここで焦っても、「こまめに布巾で手を拭けば大丈夫ですよ」と先生の言葉で、落ち着いて作業を続けられます。

そして練り上げたオレンジの餡を平たく伸ばし、黒餡を包んでいきます。

柿

ところで皆さん、用意された餡の中で黄色は柿のどの部分に使うかイメージが湧きますか?

和菓子初心者である筆者は見当もつかなかったのですが、先生いわく、「柿は自然のものだから、オレンジ一色ではないですよね」。自然な柿を表現するために、オレンジの上に黄色をのせてぼかし、グラデーションを作っていくのです。

体験講座

体験講座

柿のヘタは、平たく伸ばした緑の餡に、三角棒で切り込みを入れてから端をつまみ形作っていきます。筆者はこの作業に苦戦してしまったのですが、先生に助けを求めると丁寧に教えてくれ、「いい感じにできていますね」と励ましてくれました。

参加者の中には手元に夢中になり黙々と作っている人もいれば、おしゃべりをしながら作っている人もいて、それぞれが思い思いの時間を過ごしていました。

体験講座

さて、ようやく完成。自分で作ったものは、苦労した部分があっても可愛らしく感じられます。参加者同士でお互いの柿を見せ合いっこして、「可愛くできたね」「一人一人の個性が出ていて面白い」と、盛り上がっていました。

柿

「完成した柿は、一つ一つが異なるのが面白いし、どれも素敵ですよね」と、先生は話します。

ちなみに、各テーブルに置かれていた見本の柿も、四角かったり丸みを帯びていたり、形はもちろんグラデーションの入り方やヘタの形状まで、それぞれ異なります。見本通りに作らなくてもいい、ということを伝えたくて、あえて異なるものを用意しているそう。

柿

作った3個のうち、1個はその場でお茶とともにいただくことができます。参加者の皆さんからは「美味しい!」と、笑顔があふれていました。

3.心に残る和菓子体験を

『鎌倉創作和菓子 手毬』の和菓子作り体験講座はリピーターが多く、中には毎月通う人もいます。本格的に学びたいと、会員制のレッスンを始める人も。そんなふうに支持される理由を、御園井さんに伺いました。

ライター松井 :

「和菓子作りを教える際に、どんなことを大切にしていますか? 」


御園井さん :

「自ら作った和菓子の個性を魅力だと感じてもらえるよう、参加者皆さんへ声かけをしています。均一に整ったものではなく、一つ一つが違ってこそ美しく、素敵なのだと伝えたいですね。」

さらに御園井さんは、「日常から少し離れて、和菓子を作ることで優しい気持ちになってもらえれば」と続けます。自由に楽しく和菓子が作れる環境だからこそ、「また来たい」と思える講座になっているのです。

テーブル盛り合わせ

和菓子作り体験講座後は、隣接の茶寮にもぜひ立ち寄りましょう。

上生菓子
上生菓子 550円 ※右は「椿」、左は「市松手毬」

和菓子作り体験講座後は、隣接の茶寮にもぜひ立ち寄りましょう。

四季折々のモチーフや、「椿」など鎌倉の自然を題材にした上生菓子が並びます。数ある中でも、「市松手毬」は国内外からその美しさと繊細さが評価される作品。

和菓子作りの楽しさに触れた後は、美しい上生菓子をお土産に買って帰るのもいいですね。心に残る和菓子体験が、ここにあります。

取材・文:松尾友喜/撮影:大平正美