1.たっぷりのあんこに上品な甘さが人気の可麻久良もなか
古都・鎌倉。鎌倉の1つ手前の北鎌倉は鎌倉五山のうち、建長寺、円覚寺、浄智寺が集まるエリアです。最近、隠れ家のようなフレンチやイタリアンなど、様々なお店も増えそぞろ歩きも楽しみな場所。北鎌倉の駅を降りて鎌倉へ向かう道沿いに「三日月堂 花仙」があります。
三日月堂 花仙で特に有名なのが「可麻久良もなか」と「鎌倉どらやき」・・ん?そう、どちらも同じ読み方で「かまくら」です。
この「可麻久良」は万葉集に出てくる鎌倉時代以前の「鎌倉」の読み方の1つ。三日月堂 花仙がこの地に店を構えてからつくられた最中に、その名が付けられています。
可麻久良もなか 1個234円(税込)
品のいい白地に金で書かれた包みを開けると、厚さが5センチほどもあるもなかが。挟まれたたっぷりのあんこに、思わず顔がほころびますね。
北海道産の大納言小豆に鬼ザラメを加えたあんこは、豆々しさがしっかり残った食感も楽しめます。パリッとしたもなかの皮の素朴で、柔らかな甘さが相まって絶妙なバランス。皮が軽いので、あんこそのものをしっかり味わえます。
また、どら焼きは特製の銅版で焼き上げているのでしっとり、ふっくら。このどら焼きの皮は、甘さ控えめなカステラのよう。それだけでも充分美味しいのがわかる味。その分、あんこは甘さが控えめでなめらか。
鎌倉どらやき 1個234円(税込)
あんこの違いを感じながら食べるのも、楽しいですよ。
手焼どらやき 鎌倉殿 1,940円(税込)
また、特注の大どら焼きの「鎌倉殿」はそのサイズゆえに1枚ずつの手焼き。6人で食べるのにちょうど良い大きさだとか。令和4年に放送が決まった「NHKの大河ドラマ」と同じ名前なので注文が増えるかもしれませんね。
2.凜とした佇まい。風情のある数寄屋門を構える和菓子屋
北鎌倉から鎌倉へ抜ける鎌倉街道には鎌倉の2つの顔の1つ、山の鎌倉という言葉が当てはまります。「三日月堂 花仙」は建長寺の少し手前、数寄屋門が目印です。
「三日月堂 花仙」の始まりは昭和4年。場所は東京・池袋でした。初代が始めた和菓子店で長崎カステラを焼いていました。その味は評判でしたが、時代の流れで新たな地を求めて、北鎌倉に移転したのが平成4年のこと。
店内に飾られるお菓子を潰さないように運ぶ漆塗りの桶
心機一転、元々の店舗名である「三日月堂」に、海棠(かいどう)の別名である「花仙」を付け加えて始まりました。海棠は鎌倉で愛されている花の1つで、光則寺には鎌倉市天然記念物となる海棠もあります。
初代から受け継がれたのはあんこの作り方。その昔、その製法は非常に大切でまさに一子相伝。それほど貴重なものでした。その後、2代目がこだわったのはその材料。小豆に砂糖はもちろん、貴重な国産の天草からつくられた寒天を使用しています。
変わらぬ美味しさへの想いは、そのまま現在「3代目」となる上原義幸さんへと続いています。 上原さんは難易度の高い「一級和菓子職人」の資格を持ち、製菓学校で教鞭を取るほどの腕の持ち主。
繊細な彩りの上生菓子。左上から桃花・初桜・わらび・春の野。各330円(税込)
「可麻久良もなか」も「鎌倉どらやき」も「神奈川県指定銘菓」となっています。
3.花・寺・緑を楽しんだ後に店内で頂く甘味のごほうび
店舗らしい大きなガラス戸に紺の暖簾がかかり、手をかけると北鎌倉のつるし雛が飾られたショーケースと広い喫茶室が。北鎌倉散策の途中で甘味を楽しむこともできます。
広々とした店内。あんみつやお汁粉の他にも、あべかわ餅やいそべ餅もあり、これからの季節には氷もお品書きに加わります。
左が高橋さん、右が大前さん。
本店では、学校を数年前に卒業されたお弟子さん達が腕を磨いていており、神奈川県や東京の店舗で販売する和菓子をつくっています。「毎日違う発見がある」と教えてくれた大前さん。
花が変わりゆく季節、散策の途中、ぜひ寄ってみて下さいね。
取材・文:都野雅子
- \おうちで和菓子/
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鎌倉人に愛されている和菓子【三日月堂 花仙】