1.戸塚の住宅街にひっそり佇む「横濱 雅炉」
2020年7月、駅伝で有名な横浜の権太坂近くにオープンした「横濱 雅炉(よこはまがろ)」。住宅街の中にひっそりと佇む小さな和菓子屋さんです。
JR横須賀線の東戸塚駅からバスで7分、境木中学校前バス停下車5分。車の場合はお店の横に2台分の駐車場があります。どちらにしても、あまりアクセスは良い方ではありませんが、わざわざ探してでも行きたいと、クチコミでお客さんが増えています。
上品な生成色の暖簾をくぐると、和菓子が並ぶ棚と準備中のカフェスペースがあります。購入した和菓子を、その場でいただくことができる和菓子カフェとなるようで、そちらの営業を心待ちにしている人も多いようです。
オープンして、まだ1年も経っていませんが、取材に訪れたときには次から次へとお客さんが訪れていました。
2.五感を魅了する四季折々の風情を織り込んだ上生菓子
「横濱 雅炉」の和菓子の中で最初に紹介したいのは、繊細な美しさに思わず魅入ってしまう上生菓子です。日本の四季の移ろいがそのまま、芸術のような和菓子となっています。
上生菓子には「菓名(かめい)」という名前がつけられるのですが、それぞれにふさわしい菓名がついていて、口にすると音の響きにうっとりとします。
もちろん味も期待を裏切りません。氷砂糖を使用したあんは、すっきりと上品な甘さ。黒文字で切るときの感触、口の中でとける練りきりに、食感も刺激されます。ほんのり漂う甘い香り。
上生菓子は五感すべてで、おいしさを味わう和菓子。職人のセンスと技が光ります。
着用しているのは優秀和菓子職の証であるエンブレム付ユニフォーム
店主の金子潤さんは、20年以上東京都内や近郊の和菓子店で経験を積んできました。若い頃からその才能は注目され、その実力は2008年に誕生した和菓子のマイスター制度「選・和菓子職」で、第一回優秀和菓子職認定者に選出されたほどです。
金子さんが作り出す食べるアート、横濱 雅炉の上生菓子をいくつか紹介しましょう。季節の上生菓子は1個300円(税込)です。
緑陰(左)もらい水(右)
「緑陰」は青紅葉の浮かんだ手水鉢。キラキラと輝く水は木漏れ日を映しているようで、まわりを囲む瑞々しい植栽が見えてくるような練りきりです。
「もらい水」は、今にもふわりと咲きそうな朝露を含んだ朝顔の蕾を模した練りきり。白からピンクへと変わるグラデーションがきれいです。葉やツルの細やかな細工に、思わずため息が出てしまいます。どちらも中は上品な甘さのこしあん。
水遊び
赤と黒の金魚が羊羹の水の中で気持ちよさそうに泳いでいる「水遊び」。見るからに涼しそう。中は白あんの雪平まんじゅう。とぅるんとした羊羹とふわふわ雪平の食感のハーモニーが楽しめます。
他にも季節によって、さまざまな上生菓子がお店に並びます。日本の行事だけでなく、ハロウィンやクリスマスも。毎月のように訪れたくなりますね。
3.おうち時間を楽しくする和のおやつ
オープンして1年足らずにもかかわらず、すっかりご近所の人たちご用達のお店となった横濱 雅炉。手土産や贈答用にと購入していく人も多いですが、毎日のおやつを求めて訪れる人も。夏場は冷たいくずアイスが特に人気があります。
どら焼き 200円(税込)
1年中を通して人気なのが、お店で一つひとつ丁寧に焼いているどら焼き。袋から開けて手に持つと、そのふんわり感にまず驚くことでしょう。食べると、手に感じたふんわり感が口の中でもそのまま残っていることにびっくり!
秘密はどら焼きの皮に白ごま油を使用し、小麦粉のグルテンを切ることで、もそもそするのを防ぎ、ふんわりと焼き上げているんです。
とけるようなどら焼きの皮の中には、しっかりと小豆の粒が残ったあんこが。この食感のアンバランスがお互いのおいしさを引き立てて、ファンが多いのも納得のおいしさです。
花豆楽 700円(税込)
ちょっとした手土産に喜ばれそうなのは、竹の葉に包んで蒸しあげた花豆羊羹。やわらかな羊羹と、大きな花豆のほっくりした歯ごたえが楽しめる、甘さ控えめの羊羹です。3月から発売された商品ですが、少しずつリピーターが増えてきている注目の商品です。
もともとこちらは長年地元の人に愛されていた中華料理店でした。息子である潤さんが地元に戻り、ご両親に代わって和菓子屋をオープン。現在はご両親もお店で接客のお手伝いをしているアットホームなお店で、初めて訪れた人にも、ニコニコと出迎えてくれます。
上質な和菓子と自宅に帰ってきたような優しい笑顔。Googleマップを片手に、わざわざ探してでも出かけたいお店です。
取材・文:さとちん