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初詣のついでに訪ねたい、東京・神奈川の和菓子店10選

oriori編集部

年の初めに初詣に行くのは、旧年の感謝を捧げるとともに、新年が良い年になるように願掛けを社寺の神様に行うため。お正月に家にお迎えする“歳神様”とは別に、住んでいる土地の鎮守の神様である“氏神様”に参拝するという目的で、居住地から見て恵方にあたる社寺に参詣(恵方詣り)したりする事もありました。現在のような初詣が一般的になったのは明治時代以降のことで、氏神や恵方に限らず「正月に有名な神社や寺へ自由に参拝する」となったのも交通の便が発達した近年のことなのです。

門前市を成すという言葉がありますが、その言葉のとおり、古くから人出の多い寺社仏閣の周辺には名物となる土産ものや食べ物のお店が集まっていました。和菓子でいうと、伊勢神宮には「赤福餅」、厳島神社には「もみじ饅頭」、太宰府天満宮には「梅ヶ枝餅」、熱田神宮では「きよめ餅」といったところでしょうか。今回紹介する東京・神奈川周辺の社寺でも、参道の近隣には人気の和菓子店があったりします。お正月であっても参道沿いのお店は意外と営業していたりします。初詣のついでにちょっと足を延ばして訪れてみてはいかがでしょうか。

1.さまざまな願いが成就する大都会のパワースポット、明治神宮/味甘CLUB

まずは、東京都内の初詣スポットから参りましょう。最初は、都内屈指の参拝客を誇る明治神宮。ここには明治天皇と昭憲皇太后がお祀りされています。原宿駅が最寄りの約70万平方メートルもの広大な敷地には、全国から献木された約10万本の木々によって形成された森が広がっていて、あらゆる願意に応えてくれるパワーに満ちています。

神宮につながる表参道の裏通りに「裏参道ガーデン」があります。一見すると古い普通のアパートのような外観で、知らなければ気がつかないような建物です。半世紀ほど前に建てられた民家をリノベーションしてつくられた一角にあるのが「味甘CLUB」。モダンな雰囲気の甘味処、というより和カフェといった方がよいでしょうか。伝統的な和スイーツをアレンジしたメニューは魅力たっぷりです。一番人気はメディアでもたびたび取り上げられている「天使の涙」。お皿も含めた全体の雰囲気が、ネーミングにぴったりです。プルンプルンの透き通った美しい「天使の涙」には、たっぷりの北海道産のきな粉、無添加の黒蜜が添えられます。プルンと揺れて、喉越しツルン。断面も透き通って美しい「天使の涙」は、味わいも澄み渡っていて、天使に心を洗われるような美味しさです。他にも、ぜんざいやお餅、みたらし団子など、色々あるので、ぜひお気に入りを見つけて下さい。

2.江戸東京を安らかに見守り続ける“明神さま”、神田明神/神田達磨

続いての初詣は、神田明神へ。ここは江戸の総鎮守として1300年の歴史をもつ神社。将軍様から庶民まで江戸のすべてを守護していて、現在では、東京-神田、日本橋、秋葉原、大手町など108の町々の総氏神様として崇敬されています。

そして神田明神から少し足を延ばした神田小川町にあるのが、名物「羽根付きたい焼き」が人気の「神田達磨」です。たい焼きは庶民的な和菓子の代表格。なんといっても焼きたてが一番です。神田達磨のたい焼きの型は1つに6個あり、3分で焼き上がります。出来たてのたい焼きからは、香ばしい匂いがします。見るのも楽しくなるくらいの手際の良さ。そして早速いただいてみると、「パリッ」「カリッ」とした羽根の部分と、粒あんを包んだ皮のしっとりとした食感……そして熱々の粒あんが、もう絶妙! 持ち帰って冷めてしまったら、レンジで温めた後にトースターで焼くのがオススメだとか。

羽根付きたい焼きは、粒あんの他にカスタードクリームもあります。このカスタードクリームがとても濃厚でコクがあり、粒あんと同じく自家製なのです。温かいたい焼きを食べて、初詣で冷えた体を温めてください。

3.縁結びのご利益は絶大と評判の“東京のお伊勢さま”、東京大神宮/慶希処みおや

神田の近く、飯田橋には東京の伊勢神宮、東京大神宮があります。東京大神宮には、八百万の神々の中で最高位に位置している天照皇大神と食物・穀物を司る女神、豊受大神が祀られています。また、縁結びに御利益がある神社としても知られており、家内安全・商売繁昌・厄除開運・良縁・交通安全・学業成就などを祈願する人たちの参拝も多く、その御神徳は実に広大無辺といえます。

その東京大神宮近くの裏路地にあるのが「慶希処みおや」。昨今人気の「さつまいも」を使った蜜芋スイーツのお店です。2023年の7月に、立地にちなんだ「AMATERRACE」のブランド名から「みおや」に変更しました。

テイクアウトのみの小さな店内は、和テイストの落ち着いた雰囲気。オリジナルの音楽が耳に心地よく、ゆったりとした時間が流れています。ショーケースに並んでいるのは、蜜芋生地に栗やリンゴ、クルミなどを合わせた、和風のパウンドケーキ。お年賀のお菓子にも最適です。ハーフサイズもあるので、ご自宅用にもお求めやすくなっています。初詣が済んだら、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

4.慈愛に満ちた観音さまが見守る、都内最古のお寺、浅草寺/和菓子 楓

初詣は神社だけでなく、お寺でも受け付けています。お寺ではかしわ手は打ちませんが……。都内で2番目に初詣の参拝客が多いといわれているのが、628年にご本尊である聖観世音菩薩が示現したという縁起をもつ、都内最古の寺院、浅草寺。大晦日から三が日にかけての参拝客数が約280万人と、年間参拝者数のほぼ1割になるというから、その混雑ぶりがよく分かると思います。

その近くにあるのが創業約30年の「和菓子 楓」です。浅草駅から徒歩3分の伝法院通り店と、徒歩7分の千束通り店の2店舗があります。

お店で長年人気No.1なのがみたらし団子。一般的に甘じょっぱいイメージのみたらし団子ですが、東海地方の味付けだというみたらしあんは、甘さは控えめで醤油の風味が強く、日本人の舌になじんだ味。焼きたての香ばしさもたまりません。これに日本茶があったら、無限に食べられそうです。

散策の合間に、焼きたてのみたらし団子を味わってみてください。

5.「庚申まいり」で有名な柴又帝釈天では、寅さんとさくらがお出迎え/い志い

お寺つながりでいくと、映画『男はつらいよ』シリーズで有名な、柴又帝釈天も人気の初詣スポットです。帝釈天の正式名称は経栄山題経寺(きょうえいざん だいきょうじ)。宗祖日蓮が自ら刻んだという伝承のある帝釈天の板本尊が信仰の対象となっています。駅前から伸びる参道には名物の草だんごや塩せんべいを売る店が並んでいます。

ここで訪れたいのが、その一角にあるちょっと異色な和菓子屋「い志い」です。何が異色かって? 看板に掲げられているのが、お菓子とお漬物なんです。なおかつ、お菓子メニューにロールケーキやエクレアがあるという自由さ……。

でも一番人気は「フーテンの寅゛焼き」です。生地は毎日、200枚程度焼いているとのこと。鉄板スペースはガラス張りで、店先からも見ることができます。軽快なリズムでくるくると焼きあがっていく様子は、つい時間を忘れて見入ってしまいます。焼きたては食べ歩きならではの醍醐味。生地はやさしい甘さで、どこかカステラのような洋菓子感もあります。焼きたてはあんこの水分が多く、ジューシー。あんこのつぶ感も際立っています。時間が経つと生地とあんこがより一体化してとてもしっとり。この違いもまた「い志い」のどら焼きのいいところ。ぜひ両方を味わってほしいです。

6.学業の神様をお祀りする“下町の天神さま”、亀戸天神社/船橋屋

東京の東方に位置する亀戸天神社は、天保年間に創建した350年以上の歴史を持つ神社です。九州の太宰府天満宮と同じく、学問の神様、菅原道真公が祀られていて、太宰府ゆかりの飛梅の枝で彫られた天神像が本尊になっています。毎年正月には、道真公にあやかろうと多くの受験生が初詣にやってきます。

亀戸天神のすぐそばにあるのが、元祖くず餅の「船橋屋」。創業1805年の老舗です。200年以上にわたって受け継がれてきた発酵澱粉を使い、今日も変わらぬその味を守っています。台形にカットされたひんやりしたくず餅に黒蜜、そしてたっぷりと大盤振る舞いしてくれるきな粉は店内でいただく楽しみ! 冬でもおいしく食べられます。そして、寒い季節には温かいおしるこも登場。くず餅とセットでお召し上がりください。

亀戸天神前本店には少人数用のテーブル席の他に一人でも寛げる大テーブルがあり、高さのある天井からは船橋屋の紋を写した灯りが和モダンな雰囲気を醸し出しています。

7,8.元日から行われる護摩供養で厄除けは万全、川崎大師 平間寺/山門前 住吉、菓寮 東照

くず餅といえば、「厄除けのお大師さま」として親しまれている、神奈川の川崎大師も外せません。ここ川崎大師に奉安されている御本尊は、海の中から引き上げられたと伝えられる弘法大師空海上人のご尊像です。御利益はなんといっても厄除け。もろもろの災厄をことごとく消除する厄除大師として、霊験あらたかであるといわれています。

川崎大師の大山門前に位置しているのは、久寿餅で有名な「山門前 住吉」。「船橋屋」と同じく、でんぷんを発酵させて作られる関東風のくず餅ですが、「船橋屋」とは違って、ここの久寿餅は三角形。浄化や厄を払うという意をもつとされています。「住吉」の久寿餅は口に含んだときの喉ごしがよく、クセのない味わいが評判だそう。テーマカラーの黄色い袋も名物で、初詣ともなると参道は黄色い袋を下げた参拝客でいっぱいになるそうです。

ここまで来たら、ついでに訪れたいのが、旧東海道の川崎宿交差点にある老舗和菓子店の「菓寮 東照」です。名物は川崎名産品にも指定されている「かわっぴら餅」。北海道産の小豆をやわらかなお餅で包んだ大福を、薄く伸ばしてから、両面をこんがりと焼いています。やわらかくてもちもちのお餅は、ちょっと感動もの。店内の「茶寮木の実」でも召し上がれます。お散歩がてら、足を延ばしてみてはいかがでしょうか。

9.古都・鎌倉のシンボルともいえる“八幡さま”詣で、鶴岡八幡宮/旭屋本店

そして、神奈川で一番人気の初詣スポットといえば、毎年およそ250万人が訪れるという鎌倉の鶴岡八幡宮。源頼朝公が創建して以来、昔も今も鎌倉の象徴として親しまれています。本殿は、文政11(1828)年、将軍徳川家斉によって造営された代表的な江戸建築で、若宮とともに、国の重要文化財に指定されています。大晦日・元旦~3日は、鎌倉中心部は交通規制により自家用車が入れません。初詣は電車で行きましょう。

初詣のあとは、参拝客でごった返す参道を外れて八幡宮から金沢八景へ向かいます。道筋に見えてくる白いタイル張りのお店が「旭屋本店」です。新しそうな造りですが、鎌倉市内で3本の指に入るほどの歴史を持つ老舗の和菓子店です。

代表的な商品は「鎌倉源氏最中」。茶色でつぶあんの「頼朝最中」、緑でこしあんの「実朝最中」、そしてピンクで白あんの「政子最中」が揃っています。その昔、八幡宮にお供え餅やお菓子などを納めていたことから、当時の宮司さんから八幡宮の額の鳩の描かれた文字を使用して良いという許可を特別に頂いたという由来があります。あんこはすべて自家製となっています。

10.長谷観音の名で親しまれる祈りの花浄土、鎌倉長谷寺/鎌倉いとこ

鎌倉エリアには、鶴岡八幡宮以外にも魅力ある初詣スポットが点在しています。その一つ、開創736年の歴史を持つ鎌倉有数の古刹が長谷寺です。アジサイの名所としても有名な長谷寺は、四季を通じて花が絶えることのない「鎌倉の西方極楽浄土」とも呼ばれています。

江ノ電「長谷駅」から歩いて3分、長谷観音交差点の一角にあるのが「鎌倉いとこ」。かぼちゃと、小豆の煮物、いとこ煮からとられた店名が示すように、小豆の入ったカボチャのきんつばが定番商品となっています。きんつばは本来、あんこを水で溶いた小麦粉などをつけながら焼いた和菓子ですが、吉野の本葛を用いて蒸しあげられた「鎌倉いとこ」のきんつばは、かぼちゃあんとふっくらと炊かれた小豆を、衣が包んでいます。

毎日店頭でひとつずつ丁寧に焼かれるきんつばは、定番以外にも10種類以上の商品があります。風情のある町屋と近代建築が混在している長谷は街歩きも楽しい場所。ほかほかのきんつばは、鎌倉散策のおやつにもピッタリです。

以上、東京と神奈川の主要な初詣スポットと、そこにほど近い和菓子店を紹介してきました。出掛ける際は、暖かい装いでお出掛けください。

文:oriori編集部